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日野饂飩 [蕎麦・饂飩]

私の出身地は、滋賀県蒲生郡日野町という、鈴鹿山脈の西麓に位置する人口2万3千人の町である。戦国武将・蒲生氏郷の出身地であり、近江商人のひとつ、日野商人の故郷でもある。1889年の町村制施行の際、滋賀県でわずか6つしかなかった町のひとつで、古くから栄えた町であった。この町の特産物は、既に廃れたものも含め、日野椀・日野塗、日野鉄炮、製薬、日野菜、近江牛、近江米などが挙げられるが、現在では日野の人にもすっかり忘れられてしまった特産物がある。それが「日野饂飩」である。日野饂飩は、古い記録によると、少なくとも江戸時代の初期頃には有名であったようであり、江戸時代中期の俳人・松江重頼が編纂した俳諧の参考書「毛吹草巻第四」には、近江の名物として、「日野 饂飩 鞍 鐵炮 五器」と記されている。また、四大茶会記のひとつ、奈良の漆屋、松屋久政・久好・久重の三代が、室町時代末期から江戸時代初期の約120年間に書き綴った茶会記「松屋会記」でも、元和8年12月4日昼の項に、大和郡山藩奥平金弥家の茶会で、「ヒノウトン(日野饂飩) 又 ソハキリ(蕎麦切り)」が供されたと記されている。これらから判断すると、日野饂飩というのは、「日野で供された饂飩」と言うよりは、「日野産の小麦を使った饂飩」又は「日野風の饂飩」であったと思われる。私は、昨年、たまたま調べ物をしていて日野饂飩の存在を知ったが、日野町の人達は、古老も含めて、その存在を全く知らなかった。まさに忘れられた存在であった。この日野饂飩が、どのようなものであったのか、現時点では全く資料がない。ただ、饂飩の歴史から考えると、当時はまだ「かけ(ぶっかけ)うどん」が考案されておらず、また醤油も存在しなかったことから、恐らくは「煮貫」か「垂味噌」をつけ汁として食していたのだろうと思われる。「煮貫」とは、味噌に水を加えてもみほぐしたものを袋に入れ、その垂れ汁に鰹節を入れて煮てこしたもの、「垂味噌」とは、味噌に水を入れて煮詰めたものを袋に入れて垂れ出た汁を言う。ここまでわかったので、自宅で作ってみた。確かに、現在のざるうどんの洗練された味から見ると、美味しいとは言えないが、素朴な味があって、これはこれでよいものである。なんとか、故郷・日野の新名物になるとよいのだが。
日野饂飩2.JPG

立喰いそば(さとう) [蕎麦・饂飩]

私はそば好きである。妻の実家の本家(ああややこしい!)が、長野県大町市の老舗のそば粉屋(倉科製粉所)ということもあり、そば粉を取り寄せて、そば打ちをやったりもする。好きなそばは、田舎系の生粉打ちの太いそばそばであるが、一方、いかにも安っぽい立喰いそばも、実は大好きだったりする。旅先や仕事先の駅で、慌ただしくすすりこむそばが、なんとも美味しい。かつて、美味しいと思った立喰いそばは、ある2月の夜、夜行列車で到着した吹雪の青森駅のホームで、青函連絡船に乗り込む前にすすりこんだ立喰いそば。米原駅のホームで買い、列車に持ち込んで食べた使い捨て丼のそば。乗り継ぎの合間に食べた、西武所沢駅1番線の立喰いそば。味がどう、と言うより、むしろそのシチュエーションで、強烈な記憶として残っている。そんなこともあり、本格のそばから見れば邪道かもしれないが、私は立喰いそばが好きなのである。最近気に入っているのは、自宅近くのJR中央線三鷹駅北口ロータリーに面してある、「立喰いそば さとう」の天ぷらそば。と言っても、屋号がどこかに書いてあるわけではなく、たまたまカウンター近くのレジ横にある伝票差しに突き刺してある納品伝票の宛名をのぞき見て、やっと屋号を知ることができたぐらいで、ここでそばをたぐる客のほとんどは、「さとう」という屋号を知らないと確信している。ここの天ぷらそばは、340円。近畿圏に数多く出店している「都そば」の天ぷらそば290円と比べると少し高いが、これは「都そば」が安すぎると言うべきであって、「さとう」の天ぷらそばが安いことには違いない。で、種のかき揚げ天ぷらは、目の前の中華鍋で揚げている完全自家製。玉葱主体で(と言うかほとんど玉葱だけで)、大きさも形も、とにかくまちまちな、言ってみれば「いい加減」なものであるが、この天ぷらそばが、なんとも言えず美味い。上述の納品伝票ののぞき見で、かけ汁は1缶6,900円の「つゆの素(喜多口)」使用、そばはむらめん(株)の1玉190g37円(変動)の「茹でそば」だとわかっているが、それがなんとも美味しいのである。三鷹駅構内には、かつては「かいじ」、その後つい最近までは「小竹林」というJR直営系の立ち喰いそば屋があって、いずれもそれなりに美味しかったのだが、結局は構外の「さとう」に負けたようで、ついに(株)日本レストランエンタプライズの「彩花庵」に変わった。平日は終電頃(午前1時30分!)までやっている「さとう」は、本当に有り難い。

 所在地 東京都武蔵野市中町1-14-1
 最寄駅 JR中央線三鷹駅北口ロータリー
       TEL 0422-51-5964

立喰いそばさとう「天ぷらそば」2.jpg

とんカツうどん(パーラーレストラン・モモヤ) [蕎麦・饂飩]

皆さんは「とんカツうどん」という名前を聞いたことがあるだろうか?
新宿歌舞伎町「すずや」の「とんかつ茶漬け」は有名である。最近は、京都にも支店がある。しかし、「とんカツうどん」は、ほとんどの人は初めて耳にするメニューだと思う。これは、群馬県前橋市の市街地活性化研究会の川鍋さんが生み出した傑作。前橋の街おこしのために、新しい「名物」を作ろうと、前橋名産の豚肉とうどんとを組み合わせてみたところ、これが大成功!「NHKきょうの料理大賞新ふるさとの料理大賞」で特別賞を受賞してしまったのである。手打ちうどんにとんカツが乗り、さらに別皿でとんカツが付く。意外にあっさりして美味しい。別皿のとんカツはソースでいただいたが、これまた本格である。しかもこのボリュームで700円と格安。前橋でしか食べられないのが残念だが、一度足を伸ばして、食べに行く価値はあると思う。
  所在地 群馬県前橋市千代田町2-12-2
  最寄駅 JR両毛線前橋駅


ねぎうどん(祇をん萬屋) [蕎麦・饂飩]

関西と関東との比較で、饂飩・蕎麦が取り上げられることは多い。両者の違いとしていつも指摘されるのは、汁の色、醤油の種類、出汁の取り方、麺の硬さ、たぬきやきつねといった名称、である。私も、20歳で京都から東京に出てきて、こういった違いは確かに感じた。しかし、それらとは別の、なんとなく感じる微かな違いにとまどった。その違いが何に因るものかを突き止められないままに、10年ほど経ったある日、ふとしたことで答えがわかった。「葱」なのである。そう言えば、関西で食した饂飩や蕎麦に入っていた葱は青かった。一方関東では白い葱が入っている。そう気づいて調べてみると、関西と関東とでは、そもそも葱の種類が全く違うのである。関西は葉を食べる軟らかい青葱が主流で、関東のような白い葱は「根深」と言う。関東の土壌では、関西のような葉葱はできない。それがわかったこともあって、それまであまり好きではなかった「葱」に興味を持つようになった。関西の葱といえば「九条葱」が代表であり、京都では1束100円前後で普通に売られているが、東京のスーパーでは滅多にお目にかかれず、たまに見かけると1束350円もする高級食材である。この九条葱をどっさりのせた「ねぎうどん」を食べられるのが、京都祇園の「祇をん萬屋」である。南座に出演する歌舞伎俳優や舞妓さんたちも通うこのお店では、軟らかい関西風の饂飩に、なんと5~6本分もの九条葱をのせる。最後まで饂飩と九条葱とを一緒に食べることができるし、九条葱の甘みに、すり下ろした生姜が効いて、風邪などいっぺんに吹き飛んでしまいそうだ。ちょっとわかりにくい場所にあるが、京都へ行ったら、ぜひ一度食してみてほしい。
   所在地 京都市東山区花見小路四条下ル二筋目西入小松町555-1
   最寄駅 京阪電鉄四条駅


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